「ほら!!みんな早く帰りなさいっ!」 私の名を呼んだ声は、そう言って周りの生徒を促した。 「櫻井さん。ちょっと落ち着こうね。」 そう言って、やっぱり優しい声で私に言い聞かせ、私の手を掴んだ。 矢代くんとは違う、温かい手。 その温かさが胸に染みて、涙がまた溢れそうになる。 「………みぃ…っ」 背中に、大ちゃんの声が聞こえたけど、振り返る余裕はなかった。 その声が、切なさを帯びていたことだけが頭に響いた。