交通量の多い道路を挟んだ向かい側には、この時間、このタイミング、いつもと同じサラリーマン、小学生に自転車に乗るパートのお姉さん。
その人たちの生活リズムなんて知る由もないが、この場所でこの時間に必ずと言っていいほど顔を見る。
それは向こうにとっての俺もそうなのだろうが、なんとなく顔を覚えてしまった。
その中に、一人の高校生がいる。
他の人たちと同じように、毎朝この信号で見かけるその顔。
名前はわからない。
わかっているのは学校だけ。
県内有数の進学校。トップクラスの偏差値を誇る清架高校。
自転車に貼ってあるステッカーで知っただけの情報。
つまり、完全な他人で俺が一方的に見てるだけの関係なわけだが、俺はこの人が気になって仕方なかった。