勢いよく走ったせいか、廊下でつるりと足を滑らせてしまった。 …あ、そうだ、この前ワックスかけたんだっけ。忘れてた。 転ぶ!と思ってぎゅっと目をつぶったけれど、体に衝撃はなかった。 おそるおそる瞼を上げると、視界は真っ黒だった。 「…っぶねーな、お前は。廊下にバナナの皮でもあったのかよ」 頭の上から聞こえた声にドキッとしたけれど、私は今の状況がまるでわからなかった。