あまりに急いでいたのと、程よくアルコールが体に回っていたおかげで、いつもなら絶対通らないような路地裏を私は駆けていた。 『パンッ』 「……?」 気のせいだろうか。 私のハイヒールの音以外に、何か乾いた音がした。 音を気にしながらも、私は足を止めることはなかった。 顔だけをきょろきょろと動かして、辺りを見ながら走った。 …なんだったんだろう、さっきの音。