亘は少女の家に向かっていた。迷いはない。あるのは遂に会えるという喜びだけだ。彼女は六階建てのマンションの最上階に住んでいる。鍵を工具で壊し、中に入った。
「やっと会えた!」
亘は怯える少女にずっと恋焦がれていた名前を言った。
「人違いです!助けて!誰か!」
少女は泣き喚いている。何故泣いているのか分からない。いや、これは僕が恋していた少女じゃないのか!ただの新人女優だ。偽者だ。
彼女は何処だ!と叫ぶと、背後のドアが開けられた。聴き慣れた声がした。