――私は、ある少女に恋をして仕舞いました――
 
彼女は冬の澄んだ空気の中揺れる碧い花のように清冽としていて、それでいて春の陽を思わせるような優しさも持ち合わせております。
私の知る誰より聡明で、誰より気高く静淑とした彼女は、他の人間には感じられない何かを持っていました。何と言いましょうか…達観した空気を漂わせているのです。彼女は静かな音楽を好み、大人でも読まないような文学作品を読み、猫のように夜の散歩を楽しみました。
彼女の発する言葉は、堅固だと思っていた私の心をいともたやすく奪い、変えて仕舞いました。気付けばクラシックを聴くようになっていました。あんなに辟易していた西洋文学も、いつのまにか台詞を諳んじれるほど愛読するようになりました。夜が、好きになりました。