俺…橘千春の2009年は、秋頃あたりから急激に変わった。

何というか…その…お稲荷様と知り合いになったのだ。

こういうと大抵の人は訝しげな顔をして、病院で診てもらうように勧めてくるので、まだ誰にも言うた事はないんじゃけど…。

姫羅木曜子(ひめらぎようこ)さんという、こんな田舎町じゃ本来お目にかかれないような美人と知り合ったのだ。

毎日のように稲荷寿司を1パック食べて帰るその女性が、この冬城を守護している狐霊だった…という事を知ったのは、知り合ってから数日後の事じゃったんじゃけど…。

危険な目にも遭ったし、命を落としかけた事もあったし、良い年だったとはお世辞にも言えんのかもしれんけど…。

まぁ、貴重な体験を出来た分、なかなか価値ある一年だったのではないかと、俺は勝手に思っている。