「日菜?」


道端で立ち尽くしていたわたしの肩に触れた手と呼ばれた声。


ゆっくりと振り返った先には見慣れた笑顔があって……。


わたしは慌てて瞳に残る涙をカーディガンの袖で拭った。



「何やってんだ日菜」


「ちょっとお散歩。蒼ちゃんは?」


「駅まで葉琉日の迎え。夜道は危ないから来いって」



こう言いながらやれやれって肩を竦めてみせるけど、蒼ちゃんの顔はどこか嬉しそう。



葉琉ちゃんも蒼ちゃんが地元に戻ってるから、最近すごく機嫌が良い。



そりゃそうだよね。

大好きな彼氏と会えるんだから。



「羨ましいな」



普段は離れ離れなのに葉琉ちゃんも蒼ちゃんきちんと繋がってて……。



近くに居るのにすれ違ってるわたしたちとは全然違う……。



「何言ってんだよ。なんだー? また彼氏のことであれこれ考えてんだろ?」



カラカラと笑った蒼ちゃんが、肩を落としてるわたしの頭をクシャっと撫で付けた。



やっぱり蒼ちゃんと居ると気持ちが落ち着く。