「おまえ離れろって」


「言ってた通り地味だねぇ。善雅先輩が会わせたくないって言った気持ちわかるー。全然釣り合ってないじゃん」



腕に絡み付いてた秋奈を振りほどいたと同時に。


悪びれた風もなく、いつもの調子で言い放った秋奈の言葉で頭の中が白くなる。



一番日菜琉に聞かせたくなかった言葉が、容赦なく秋奈の口から飛び出していく。



そして極めつけ。



「どこが芳川先輩より好きなの?」



静葉の名前が出た瞬間。

顔を伏せた日菜琉が身を翻し、



「日菜琉っ!」



夜道の先に走り去ってしまう。



名前を呼んで伸ばした手は届かない。



俺が秋奈に日菜琉のことを地味だって言ったのは事実。

どんなにイイオンナだって言ったって、頭の隅では日菜琉を地味だって思ってる自分が居たから……。


また、だ……。


また俺は目の前で日菜琉を傷付けてしまった。