「じゃあ161ページの……」


「善雅先輩ってさー」


「喋りは良いからペン持てよ」



参考書を手に取ってページをめくっていく俺に、秋奈は机についた肘に顎を乗せて相変わらずこっちを見つめてる。



俺に促されてペンは握ったけど、気持ちはノートや参考書からはそっちのけ。



ペンを握ったままぐっと俺に顔を寄せ、


「まだ芳川先輩と付き合ってんの?」


「はぁっ?」


「一年の時噂になってたんだもんっ。美男美女カップルだって」


「……良いからノートの方向けよ」



興味深げに俺の答えを待ってるから、左手で体を押し返した。



……これだから同中のヤツは嫌なんだよ。



良くも悪くも静葉と俺は目立ってたから。

ミーハーな女子には恰好のネタなんだろう。



「先輩が答えたらちゃんと勉強したげる」


「……じゃあ勉強すんな」


「良いけど家庭教師の派遣会社にチクるよ?」


「…………」



窺うような眼差しで相変わらず見つめてくる秋奈に思わず溜め息が出る。



……やっぱり辞めとけば良かった。