来てしまった以上はそのまま帰るワケにもいかず、足元にカバンとカーキのマフラーを置いた。



とりあえず今日だけは……ってことで机に椅子を並べて勉強を見る。



……はずだったのに。



「わたし河野 秋奈(あきな)って言います。よろしくね善雅先輩」


「先輩?」


「だってわたし同中の後輩だもん。だから善雅先輩」



こう言って机の上にノートやら参考書を並べた後、秋奈はくりっとした大きな瞳でじっと俺を上目遣いに見上げてる。



一般的には可愛らしい顔をしてるけど、年齢より大人びた顔立ちにも見える。



でも……あんま賢そうじゃない、っていうかアホっぽい。



多分見た目って言うより喋り方のせいだな。





辞めようかとも思ったけど、やっぱり指環にするならペアリングが良いしな。



とりあえず必要以上は関わらないでさっさと終わらせよ。


んで即帰る。



頭の中でそう決めて、兄貴から引き継いだ進み具合のメモを取り出す。



その間もずっと秋奈は好奇心たっぷりの眼差しで俺を見上げてるままだ。