彼はようやく、わたしの向かい側に腰を据えた。
何気に、隣も嫌だけど面と向かうのも緊張してしまって、ちょっとなあ…と思う。
それにわたしのそんな気持ちを知ってか、知らずか、やけに感じる彼の視線。
わたしはそそくさと鞄から、お弁当を出して彼の前に置いた。
焦っている所為だろうか、そんな動作も荒々しくなってしまう。
「お昼休み、終わっちゃいますよっ。は、早く、食べましょう…!!」
自分の分のお弁当も出して、それらを紐解いていったり、箸を出したりするけど、危うく箸が滑り落ちそうになる。
「わっ!!………っと、」
危ない危ない。
頭の中では、野球の審判が両手を広げてセーフのポーズをしている。
するとクスッ、と声の漏れる音がした。
「せ、せんせい!!」
「だって、みいのこと見てると面白くて」
うぅ…
結局、彼にとってわたしはまだ、"面白い"存在でしかないらしい。
そんなことと、我ながらの見事な失敗を反省して、わたしは卵焼きに箸をつけた。


