駅から歩いて5分も満たないほどで、先生が予約していたレストランに着いた。
「あ、ここ…!」
「ん?」
ヨーロッパ風なお洒落な外装のそこは、兼ねてから行きたいと思っていたところ。
「…えっと、ずっと行きたいなって思ってて。でも、一人じゃ入りにくいなあって…」
思わず興奮してしまったことを反省しつつそう言うと、彼はぱっと顔を明るくした。
「良かった。みいのことを考えたら真っ先にここを思いついたから」
さらっとそんなことを言われると胸がきゅうんとなる。
ドアに手を掛けてエスコートしてくれる彼に紅潮している頬がバレないことを祈りつつ、くぐり抜けた。
「うわあ…」
初めて目にする内装は、外装から受ける期待を裏切らないどころか、想像以上のものだった。
アンティーク調で、照明やテーブルをはじめ、ところどころに置いてある小物まで胸をくすぐるものばかり。
周囲を見渡すわたしを彼が幸せそうに見つめることも知らずに、わたしはお店の空気を吸い込んだ。
席を案内されてもずっと周囲を見渡すわたしに、先生が口を開いた。
「幸せそうなみいを見ているのも嬉しいけど、ちょっとは俺のことも意識してよ?」
「へ…、あ…す、すみませんっ」
というか、そのセリフはやばいですっ…。
今までは何だったのか。
今度は逆に先生にしか集中できなくなってしまう。


