「…試しに、してみよっか?」
「へ、せ、せん、せ………!?ま、待っ…!!」
先生に"待った"は、存在しないのか。
20センチはどんどん、さらにスピードを上げて近づいてくる。
それに比例して上がっていく自分の両肩。
膝に置いた手においては、握り拳を形成しつつあり、ピンク色をしたナース服に似たデザインの制服に皺をつくっていく。
「みい、」
握り拳に先生の、温かくて大きい手が重なった。
そして、もう片方の手はわたしの顎へと伸びる。
どこかの彫刻のような綺麗に揃った指に支えられた時には、もう先生の顔は肌の繊維が見えるくらい目の前だった。
先生なんか、もう目を瞑っちゃっている。
というか、このままいったらわたし、本当に先生とキスしちゃうの?
嫌なわけじゃない。
むしろ、不本意でも好きな人とキス出来るなら―…
自分の欲に負けた瞬間だった。
負けた、とわかっていながらも、否負けてしまったからこそ、瞳を閉じかけたその時―…、
「なーんて、ね」
…………はい?


