ラビットクリニック


すると、先生は一瞬驚いた顔をしたけど、いつもの笑顔に戻って口を開けた。

わたしはそこに、甘い甘い玉子焼きを放り込む。


「…ん、格別」

彼の満足そうな笑顔に胸が音を上げる。


しかも、"あーん"をした所為か、やけに距離が近い。

そんな、要因が積み重なって、堪えきれなくなったわたしは思わずうつ向いた。


でも、それがいけなかったのかも知れない。



「みい?具合、悪いの?」

「……!」

綺麗な双眼と合うのは、わたしのそれ。


ゆっくりと視線を上げると、意地悪なのか、彼もそれについてくる。


その距離わずか20センチを保ったまま、向かい合うわたしと先生。


硬直状態のわたしに、先生はふわり、と微笑んだ。


「…キス、出来ちゃいそうだね」


シュッポー!!!!!

その一言に、たった―…なんてものではない。

少なくとも恋愛経験が乏しいわたしにとっては。



先生の予期せぬ爆弾投下発言は、わたしを蒸気機関車さながらの汽笛を鳴らすのには十分だった。