君が必要とする限り



頑なに拒んでいたその足元を、
無理やり引っ張り、部屋へと入る。


鍵を閉めて、靴を縫いで、電気をつけて…


その一連の動作に妙に緊張が走り紛らわすようにリビングへと向かった。


いつ怒鳴られるのか、わからない。


「ふざけるな!」


…そう、言われるかもしれない。

なに、びくびくしてるんだろう、私。
自分から仕掛けた、のに。



「先生、コーヒーと紅茶、どっちがいいですか?それとも緑茶?」

先生は、何も言わない。


お願い、先生。
怒って。そして、もう私に二度と会わないで。


「コーヒーに、しますね。」



震える手で、カップを掴む。


…嘘。
そんなの、嘘。


本当はね、
寂しくて、悲しくて…
辛くて、苦しくて。




行かないで、先生。
先生だけは、離れていかないで。