もしかしたら、彼女は俺の中で
すでに特別だったのかもしれない。
いや…でもそれは、患者としてであって、決して異性としてではない。
…そう、思う。
なんてことを考えながら
待合室へ到着。
すれ違う看護師や患者に挨拶をしながら見つけた彼女の姿。
相変わらず、美人だ。
こんなこと言ったら、
笹木さんに怒られちゃうだろうな。
「こんにちわ。」
すると彼女は俺の存在に全く気付いていなかったらしく、
ビクッと肩を揺らした。
「…あ、びっくりさせてごめんなさい。」
「いえ…少し考え事をしてたから。私こそ、ごめんなさい。」
最初は下を向いていた瞳を
ゆっくり持ち上げて、
俺を見上げた。
長い睫毛が、光に当たり
微かな輝きを持っていた。


