君が必要とする限り



「これはね、全部亜矢子が教えてくれたんだ、俺に。
あんたにこんな話、まさかしてないよね?」


口角を上げてバカにするように笑った。
渇いた笑い声が部屋に響く。


「あんたは、亜矢子を助けられないよ、絶対。」


俺の背後で声がする。


「あんたには、無理だ。
早く、消えろ。
お前は人殺しの、子どもなんだから。」


――人殺しの、子どもなんだから………


「…………なら、」


「え?」


「それなら、なおさら、
彼女を人殺しにはしたくない!」

ドンッと壁に追いやり
再び胸ぐらを掴む。


「彼女を助けられないなんて、あんたに言えることじゃない!
それは、彼女自身が決めることだ。
彼女がもし、必要とするならば、俺はずっと傍にいる。


あんたとは違って、体じゃなくて俺は心で繋がっていたいんだ!」


言い放ち、
玄関へと足を向ける。


「どこ、行くの?」


その声には振り返らない。


「…病院に行く。」


「そっか…まだ間に合うといいけど。」


ドアのぶに手をかける。


「俺は、亜矢子のこと、本気で愛してた。
だけど、人間一方通行じゃダメなんだよね。」


意味を理解しようと振り返る。