君が必要とする限り



俺と視線を合わせる。


この人、どこかで……


「あんたとは会うの、二度目だね。」


「二度目……?」


蘇る、記憶。


あ、アイツだ。
親父と食事をした日に、
ぶつかった、アイツだ。


香水の香で眉間にシワが寄るのがわかった。



「俺はね、亜矢子を拾ったんだ。5年前にね。
彼女はまだ15歳だった。
可愛かったよ、すっごく。


まだ幼くて…でも、
悲しい瞳をしてた。」



その男は俺に歩み寄る。


肩に乗る、手。
俺よりも背が高いから
見下ろすような視線。


そして低くこう言った。


「彼女の処女を奪ったのも、俺だ。」


その瞬間、
頭に、手に、上る血。


男の胸ぐらを掴み、
心の底から睨み付けた。