親父は、追いかけてくるのをわかっていたように
「まだ何か言いたいのか?」
そう、言った。
「当り前だろう。黙って従うとでも思ってたのか?」
「隆太の性格上、それはないか。」
親父が苦笑する。
「なぁ、親父。
俺にずっと、いや、俺たち家族に、黙ってたことないか?」
一台のバイクが高い音を響かせ通り過ぎる。
車のライトが光る。
タクシーの扉が閉まる。
親父はその場に立ち尽くし、
俺と目を合わせた。
やっと、やっとだ。
「…あるんだろ?正直に、話してくれよ。」
この間にも
何人もの人が通りすぎる。
「大野亜矢子と、関係してることなんだろう…?」
合わせていた視線から逃れるように、
親父はまた下を向いた。
――もう、嘘をつくな。
俯いた姿に、そう訴えた。


