私がね・・・・
「私が、毎日病院に来る理由は、リョウに私を早く覚えてほしかったからだよ。」
そう、覚えて・・・・
いや、思いだして欲しいの。
「そんなん、もう覚えたよ。」
って、当たり前のような顔をする。
『もう』ね。
さっきまで忘れてたクセにね。
その時だった・・・
「笑うなよ。」
そうつぶやいた・・・
そして私の腕をつかみ、引きよせ、
キスをした。
それは、まさに突然の事で、何かを考えてる余裕はなかった。
ただ、唇の触感だけが伝わった。
「・・・んっ・・・」
苦しい。
息がうまくできない。
おもいっきりリョウを押した。
私の腰にまで腕をまわしていたリョウは、ベッドに倒れた。
自分の荒々しい息づかいが聞こえる。
リョウは、なぜか驚いたような顔をしていた。
驚きたいのは、こっちなんですけど・・・。
そのあと、リョウの顔は真っ赤に染まっていった。
「あっ・・・ごめ・・つい。」
私もリョウも、オロオロとしている。
「あ・・・もう帰るね。」
「そ・・そ・・だね。」
「じゃ、バイバイ。」
「うん。」
立ち上がり、せかせかとジャンパーをはおって
病室から逃げるように出ていく。
外にでてすぐ、「ふー」っと肩の力を抜いた。
まさか、いきなりリョウがあんな事するなんて・・・。
『あんな事』が、頭から離れない。
キス・・・しちゃった!!
好きな人とのキスは、嬉しかった。
でも、なんでいきなりしてきたの?
『つい・・・』って何?
わかんないよー・・・。
こうして、私のファーストキスは
大好きな人によって、突然に奪われた。