「蒼、大丈夫?
顔色わるそうだよ。」


心配して覗きこんでくる隣の席の親友の

野口.聖
"のぐち.ひじり"

は高校生になって初めての友達で、大親友。

最初は長い黒髪の二つ結びで眼鏡、と言ういかにも真面目そうな感じで喋りにくそうな子だなぁ、と思ったけど、喋ってみると正反対。

喋り倒すんじゃないか、と言う位喋るしゃべる。

このままほっといたらいつまでしゃべるのか、いつか本当に実験してみたいと思う。


でも今は親友に返事をする元気もない。

机に突っ伏したまま右手を振って返事をする。


けっきょく今日の朝は遅刻。
授業中にコソコソと黒板を横切る恥ずかしさといったらなかった。

しかも、宿題のプリントは昨日晴貴の家で解いて、そのまま忘れてきた。

今日は本当についてない。

はぁー

何度目かわからないため息が、私の口から漏れた。


「でもいいよねー。蒼は!!
学年一のイケメンと幼なじみなんて、ホント羨ましい!!
私もカッコイイ幼なじみが欲しいな~」


もう何度目かも解らない程聞き飽きた台詞。

めんどくさいことに、私の家に入り浸っている幼なじみは人気がある。

学校ではアイドル並。

確かに整った顔はしてるし、鼻は高いし、背は180越えてるし、サッカー部期待の新人となれば、嫌でも人目をひく。

でも、生まれた時から兄弟のように一緒に育った私にとっては"カッコイイ"というのは理解できない。

だってあの晴貴だし。

と声に出して言ったら、お喋りな親友が珍しく、口ではなく手をだした。

教科書がパコンッ、と私の頭で軽快な音を立てた。