「だったら全くなかったって言い切れますか? 下心なんてこれっぽっちもありませんでしたって」


ニヤリ。

笑って聞いてやる。

すると先輩は、案の定。


「・・・・ムリ」

「ほーら、やっぱり。言わんこっちゃないですよ。バーカ!」


結局はあたしに言い負かされるんだから、そんなのはじめから言わなきゃいいのに。

ぷくーってフグみたいにほっぺたなんか膨らませちゃって。

先輩ってからかうとおもしろい。

そんなあたしたちを見て、サヤは「これじゃどっちが先輩なんだか分かんないよ〜!!」と涙を流しながらケラケラ笑う。


いつもはサヤと2人きり、こんなに笑ったりもすることなく学校での日々を過ごしてきたけれど。

先輩のおかげで楽しい。


あの噂のことは、先輩やあたしがはっきり否定したことで1週間経った今ではすっかり消えて。

こうしてあたしが2人とじゃれ合っていることで、クラスのみんなやほかの学年の人たちにも・・・・。

『吉岡千景は見た目ほどツンケンしているヤツじゃない』と、徐々に認識されはじめてきた。