「おい。」
ちょっと強めに言ってみると、円城はこちらも見ずに左手をこっちに突き出した
「ごめん。杏里っ…ちょっと待って。」
俺…河辺さんじゃないんですけど…
「円城~」
「だーかーらぁー
ちょっと待ってよっ…!」
円城は勢いよく立ち上がりこちらを見る
「…って、え?」
―ガタガタっ!
俺だと分かると円城は驚いて後ずさる
「な!…な、ななな…なんでっ…っ
棗サンがっ!?!?」
どうやら円城はパニック状態
首をぶんぶん振りながら「え?げ、幻覚…?」とか言っている
「幻覚じゃねーから。」
それを訊くと円城は恐る恐る俺をツンツンとつつく
「お…本当だ。」
なんだよ。その確認の仕方…
俺は、はぁ…とため息をつき椅子に座る
「え?…でも、どうして?」
「河辺さんにお前を呼んでこいって頼まれたから。」
「杏里に…?」
しかし円城は納得いかないのか首を傾げている
「お前…あれから1時間もたってんだぞ」
「…えぇ!?」
あ…む、無自覚だったのか。

