「じゃあ、入場券買ってくる」

「あ、待って」

私は一也さんの腕をつかんだ。

「んっ?」

一也さんは振り返ると、不思議そうに首を傾げた。

「えっと、私の分のお金…」

呟くように言った私に、一也さんはクスッと笑った。

「いいよ、俺が美羽ちゃんの分も払うから」

そう言って、一也さんはチケット売り場に向かったのだった。

「わお、レディーファースト」

その声に振り向くと、すずめの子…じゃない、堺さんだった。

いい加減に名前を覚えろ、私。

「若宮さんも見かけに寄らず優しいとこあるのね〜」

うっとりと一也さんを見つめながら、堺さんが言った。