「んー?

俺たちの場合はお互いしか愛せないから大丈夫」

ニタリと、主任が眼鏡の奥でまた笑った。

はいはい、そうですか。

来客が泊まりにきても、仲良くしているくらいである。

確かに、主任夫婦は何があっても大丈夫かも知れないと俺は思った。

「恭吾」

理彩さんが主任にたしなめるように言った。

「何かマズいこと言った?」

そう言って首を傾げた主任に対し、理彩さんは何も言えないと言う顔をした。

完全に主導権を主任に握られているな、これは。

天と地がひっくり返るような出来事が起きない限り、東雲家の主導権は理彩さんに譲られないだろう。

そう思っていた時、
「あ、きたよ」

堺ちゃんが指を差しながら言った。

一斉に俺たちはその場に視線を向けた。