「若宮」

今日の仕事を終え、帰り支度をしていた俺を呼び止めたのは主任だった。

「何ですか?」

そう聞いた俺に、
「今日は俺の家で夕飯をごちそうにならないか?

楠田さんも連れて」

主任が言った。

「いいんですか?」

聞き返した俺に、
「いいから招待しているのだが」

主任が言った。

そりゃそうか。

「わかりました」

俺は首を縦に振ってうなずいた。


この間の騒動以来、俺たちは主任の家に遊びに行くようになった。

「お邪魔しまーす」

美羽ちゃんと主任と一緒に中に入ると、いい匂いがした。

「おかえり、恭吾」

リビングから主任の奥さんの理彩さんが出てきた。

「ただいま」

主任が理彩さんにカバンを渡した。

「こんばんは」

俺たちと目があうと、理彩さんがあいさつをした。