「バカになんかしていない!」

男が相手に向かってそう言った。

彼が言った相手は、美羽ちゃんだった。

「こんなところまできて、その話なの!?」

美羽ちゃんが声をあげて、男に向かって怒鳴った。

「自分から別れを言っておいて、よくそんなことが平気で言えるわね!」

そう言った男に、
「あの時は、気が迷って…」

「美羽ちゃん!」

たまらず俺はその場に現れ、彼女に声をかけた。

美羽ちゃんと男が驚いた様子で俺の方に視線を向ける。

「一也さん…」

さっきの怒鳴り声はどうしたのかと思うくらい、美羽ちゃんの声は消え入りそうなくらいの小さな声になっていた。

「はあ!?」

男が驚いた声を出し、俺と美羽ちゃんの顔を交互に見つめた。