「結婚か…」

美羽ちゃんはそう呟いて、微笑んだ。

結婚――その単語に、俺の心臓がドキッと鳴った。

そう言えば、俺ももうすぐで30歳だな。

結婚を考えていなかったと言う訳ではない。

出会って、つきあって、デートして、一緒に暮らして…それらのことをして、俺たちはようやく半年を迎えた。

あっという間だったようなそうでないような…けど、それくらい時間が経っていたと言う証拠だ。

もうそろそろ、彼女と結婚を考えなければならない。

「一也さん」

美羽ちゃんに名前を呼ばれ、俺は我に返った。

「んっ、どうしたの?」

「あの…」

美羽ちゃんが話しかけた瞬間、その場を裂くように携帯電話の着信音が鳴り響いた。