「もしもし?」

声をかけた俺に、
「一也さん?」

電話越しに聞き覚えのある声が聞こえた。

「美羽ちゃん」

美羽ちゃんだった。

「どうしたの?」

「課長さんから一也さんが体調を崩して休んだって聞いたから、心配で電話したの」

時計を見ると、午後の2時を過ぎていた。

あれから俺はかなり寝ていたらしい。

自分が浦島太郎になったような気がした。

「大丈夫?」

美羽ちゃんの声に、俺はハッと我に返った。

「うん、風邪をひいただけだから」

そう言った俺に、
「そうなんだ…。

あの…仕事が終わったら、お見舞いにきてもいい?」

美羽ちゃんが言った。

「えっ…?」

その言葉を飲み込むのに、少し時間がかかった。