「花嫁は頂いていくぞ!」

 バサァ! とマントをひるがえしたかと思うと、その背にコウモリの翼が生えて飛び去っていった。

「ちょっ……それ反則!」

 テイシンは慌ててベランダに駆け寄るが、掴みかかった手は虚しく宙を切った。

「なんなんだあいつ!」

 急いで階段を下りて空中の影を追う。しかし、息が切れてきた。

「! 借りるぞっ」
「えっ? おい!?」

 肉屋の前に馬があったので無理矢理借りて飛び乗る。

 影は街の外へ──

「どこまで行きやがる」

 そうして目の前には切り立った山に寄りかかるようにして建っている『城』と呼べるような大きな建物に、影は入っていった。

「……こんな処にこんな建物あったっけ?」

 まあ、こっち側はあんまり人も来ないし影になってる場所だから人目に触れないんだろうな。

 考えながら、テイシンは建物の入り口に向かって馬を走らせた。