深夜、人々が寝静まった頃──王都の街を飛び交う怪しい影。

 音もなく忍び寄るそれは、テイシンの借家のベランダに足を踏み入れた。

「……」

 月明かりが部屋を照らす。ベランダに横たわっている褐色の肌の青年を見つめて、中に……

「!」

 小さな物音に驚いてしゃがみ込みテーブルの影に隠れた。

 喉が渇いたベリルが水を飲みに起きてきたのだ。

「!」

 月明かりに照らされた彼の金色の髪とエメラルドの瞳にその影は一瞬、声を出しそうになった。

 水を飲み干し、手の甲で口を拭って部屋に戻る。

 いつもの彼なら、そんな気配にはすぐに気が付くハズ。しかし、今夜は違った。