男はそれに、下品な笑みを浮かべた。

「よく覚えていてくれたねぇ。親の名前を」

[! 親の名前……?]

 目を見開いて微動だにしないベリルと、レジカと呼ばれた男を交互に見やる。

「来なさい。まだ君は完全ではない」
「……」
[ベリル!!]

 ベリルは、誘われるようにゆっくりとレジカに歩み寄った。

 もはやヴァラオムの声は届かないようだった。伸ばす手も虚しくイバラに阻まれる。

 レジカはあざ笑うような眼差しをヴァラオムに向け、ベリルと共に遠のいていく。

[こんなもの!!]

 魔法を唱えようとした途端、イバラはトゲを伸ばしてヴァラオムを威嚇した。

 イバラのつるは強靱で、引き裂くこともままならない。

[錬金術で造ったものか……]

 ヴァラオムは溜息をついた。

 今更、彼をどうするつもりなんだ。眉間にしわを寄せる。