「名前は確か~……レジカだったっけ?」

 酔っぱらいのハンスは馴れ馴れしくヴァラオムの肩をバンバンと叩き、乱暴に酒を傾ける。

「……レジカ」

 ベリルは何かひっかかるものがあったが、記憶には無かった。


[覗いてみるか?]

 ヴァラオムが村を出ても考えているベリルに訊ねてみた。

 ベリルはしばらく考えたが、

「……いや。止めておこう」

 言って、馬の手綱を引っ張った時──

「それは悲しい事を。折角、待っていたというのに」

 ふいに横からの声。顔を向けると、そこには濃い紫のローブを来た50代と見られる男が立っていた。

「!」

 一瞬、ベリルの心臓がドクンと高鳴った。理由は解らない。

「そっちのドラゴンは待っていなさい」

 男がそう言い放ち、左手に持っていた小瓶のコルクを抜いてドラゴンの方に中の液体をぶちまけた。