[王都には寄らないのかね?]

 ヴァラオムはベリルに問いかけた。

「……」

 それに少し考える。1人と1匹は王都の近くの、小さな村に立ち寄っていた。

 もちろんヴァラオムは人間に変身している。

 銀の長い髪、褐色の肌はよく目立つ。小さな村において、これほど話題を呼ぶ2人はいないだろう。

「……フードを被ったらどうなんだ」
[今更遅い]

 とはいえ、この村は何度か訪れている。ベリルの顔見知りも何人か存在し、いつも快く迎え入れてくれるのだ。

「そうそう、この先に荒れた土地があるだろう」

 そのうちの1人、ハンスという男が食事をしているベリルとヴァラオムに話しかける。

「そこに変な男が住み着いたんだ」
「変な男?」

 食べ終えたベリルは興味深げに聞き返した。

「ああ、身なりはちゃんとしてて横柄な態度。ありゃ昔はどっかのエラい人だったんじゃねぇかな」

 東の荒れ地に大きな屋敷を建てて1人で住んでいるらしい。