雄ヤギの頭と下半身、コウモリの翼に赤い体。

 さすがのキルヒアイゼンも、デーモンと対峙して体を強ばらせた。大きな腕がキルヒアイゼンを掴む。

「ウッ……よせっやめろ!」

 許しを請うようにベリルに目を向ける。しかし、その瞳は冷たかった。

「ぎゃあぁぁー!」

 建物に魔法使いの叫びがこだました。

 デーモンは『足りない』とでも言うようにベリルに近付く。

 顔を近づけてきたデーモンに薄く笑い、

「元の場所に還るがいい」

 言うと、デーモンはベリルに手を伸ばして消えていった。

 部屋の中は静まりかえる……主を無くした黒いドラゴンたちは、解放されたとばかりに窓から空に飛び立っていった。