王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地

 体が動かない。パラライズ。麻痺の魔法だ。

「……っ」

 剣を持つ手に力がこもる。麻痺の魔法といっても持続するものじゃない。効果が切れる時に賭けるしかない。

 ベリルの瞳は真っ直ぐにキルヒアイゼンに向けられていた。

「眠れホムンクルス」
「!」

 眠りの魔法? まずい……ベリルは必死に口を動かすと、キルヒアイゼンが放ってくる魔法に耐えて唱え終った。

「!」

 キルヒアイゼンは、部屋に満たされていく邪悪な気配に目を泳がせた。

“ズ……ズシ……”

 不気味な足音が背後から近づいてくる。振り返るとそこには……

「!? デッ、デーモン! こんなものを召喚したのかっ!」

 真っ赤な瞳が魔法使いを捉えた。