青年がそう言ってくるりと体を半回転させると、男たちはよろよろと離れていった。

[ベリル]

 3メートルほどの白いドラゴンは、手綱に目を向けて「早く外せ」という顔をした。

 ベリルはそれに薄く笑って、『ヴァラオム』という名の白いドラゴンから手綱を受け取った。

 王国ファンタジアを襲ったドラゴンを倒してから数ヶ月が経つ。

 ベリルの事はわずかながらも広まり、彼を狙う者が後を絶たない。

 旅を続けているベリルだが、こんな命のやりとりは願い下げたい処だ。

 一ヶ月前に再会したヴァラオムは、事情を知りしばらくベリルと行動を共にする事にした。

 ヴァラオムはベリルと友人関係である。ドラゴン討伐にも協力した仲だ。

 どこまでも続く平原を、馬の手綱を持ちヴァラオムと歩く。

「!」

 目の前に人影。遠目から女だと解る。

 目深(まぶか)にマントのフードを被り、赤い目が近づいてくるベリルを見つめる。