王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地

 あくる朝──ジェイドは集落の中をゆっくりと歩いていた。

「!」

 ふと、1人の少年に目が行く。

 焦げ茶色の髪と瞳。幼さの抜けきっていない顔立ちだが、凛とした表情。

 実は、この集落にはジェイド以外にも訪れている者が何人かいた。

 ドラゴンから逃げてきた者だ。途中で負傷し、ここで療養している者もいる。

「!」

 少年の前に出来る影。見上げるとジェイドが少年を見下ろしていた。

「こんにちは」
「うむ」

 ジェイドは見回し、静かに問いかける。

「貴殿は、ヒーラーか?」
「はいそうです」

 こんな少年が……感心したように見つめるジェイドに、サナは戸惑いながら問いかけた。

「あの、ベリルのご友人ですよね」
「! ああ。そうだ」

「僕、サナっていいます」
「ジェイドだ」