「長老は彼の顔を知っていたのですね」
「うむ。何度かお顔を拝見した事がある」

 ドラゴンを倒し、平和な国を取り戻す。そのために、どれだけの命が消えた事だろう。

 だがしかし……ドラゴンもまた命を持つ者。

 存在は違えど、それもまた同じ命に代わりはない。

「……」

 長老は苦い顔で見上げる。

「ドラゴンよ……何故だ」

 答えは返ってくるはずもなく。重たい空は、ただ地にいる者たちを見下ろすのみ。

 流浪の民の集落は、流れ着いた者たちが集い暮らす場所。

 故あって居場所を追われ、ここにたどり着いた者が安住の地とする処。

『流浪の民』──その名の真実はそこにある。

 それは、いつしか忘れ去られた真実だが誰をも受け入れる心は今も受け継がれているのだ。