流浪の民の男は17歳になると旅に出て世界を知る。

 ベリルには魔法の素質もあったらしく、旅先で手に入れたマジックアイテムを集落にいくつか残していった。

「しかしハテ? 地の魔法を出したつもりじゃったんじゃが……」

「……」

 パドメは長老の言葉に目を丸くした。マジックアイテムを使うには、それなりの呪文が必要となる。

 地の魔法と間違えて風魔法の詠唱をしたのに、よく出たわね……これはこれで才能なのかしら?

 コボルドを倒しながら、パドメは空を仰いだ。

「大気が……悪意に満ちている」

 流浪の民は気の流れを読み、戦う。世界に流れる気がよどんでいる事をパドメは感じていた。

 コボルドは凶暴といっても、頻繁に襲ってくるようなモンスターじゃない。

 しかも、これほど執拗(しつよう)に……これもドラゴンの影響なのだろうか?