王国ファンタジア【流浪の民】外伝~震える大地

 それから部屋に戻り、少年に色々問いかけてみたが、彼の答えは的を射ていないものばかりだった。

「……」

 なんと不思議な子どもだ……

 夜になってねむりにつき、朝になると老人はベリルを連れて昨日の場所に向かった。

 それを5日ほど続けたが、誰1人ベリルを見て駆け寄る者はいなかった。

「……」

 老人は胸がつかえるのを覚えた。言葉にならず、少年を黙って抱きしめる。


 老人は、そうしてベリルを集落に連れ帰った。

 無表情だった少年も、しばらくすれば多少の感情を表すようになり、セシエルと仲良くなる。

 彼が6歳になった頃、長老に嬉しい出来事が訪れた。

 長老の息子の妻が、男の子を産んだ。

「……」

 ベリルは、赤子の顔をのぞき込む。