「! 長老さま」

 風の魔法を放ったのは長老だった。パドメは軽く睨みを利かせた。

「コボルドに魔法なんて使わないでくださいよ! 折角ベリルが置いていったマジックアイテムなんですよ」

 パドメが言うように、コボルドは雑魚だ。魔法など勿体ないと言われる程の。

 主に洞窟などで集団で暮らし、武器を持って戦うという知能は持ち合わせている程度のモンスターである。

 彼らの集落の近くには強いモンスターはいないがコボルドは度々、集団で襲ってくる事があった。

 彼らは弱い、集団で行動して人や動物を襲わなければ勝てないのだ。

「何を言うんじゃ! 折角ベリルが持ってきたものじゃぞ! 使わねばどうする」

「……はいはい」

 パドメは呆れて目を据わらせた。ベリルが持ってきたものを使いたいだけなのね……

 22年前、ふらりと立ち寄った街で3歳のベリルを見つけて集落に連れ帰り育てた長老は、自分の息子同様に彼を可愛がった。

 そのせいで事あるごとに集落に呼びつけられるベリル。