「おぬし、名は?」
「……ベリル」

 かがんだ老人の顔を無表情に見つめて、3歳と思われる子どもは答えた。

 エメラルドの瞳が妙に輝いて見える。

「お父さんやお母さんはどうしたね?」
「……」

 少年は応えない。その単語すら、知らないような顔をしている。

 老人は、子どもの頭をくしゃくしゃとなでて周りを見回した。

「……」

 やはり、駆け寄ってくる人影は無い。

 老人は、暗くなるまでその少年とそこにいて夕闇がせまってくると少年の手をとり一緒に宿に向かった。

「お腹が空いたろう。食堂で何か食べような」

 テーブルのイスに腰掛ける。

やがて運ばれてくる料理に、ベリルは少し珍しそうな顔をした。

「……」

 老人が食べる様子を見て、少年もフォークを手に取る。

「おお、上手いな」

 少年の持ち方に、老人は感歎(かんたん)の声を上げる。