「ふぅ~疲れた」

 長老は溜息を吐き出し、暖炉の前に敷かれた毛皮にあぐらをかいた。

「まったく、なんだってコボルドがあんなに襲ってくるのじゃ」

 ぶつくさ言って手にある革袋に目を移す。

「……」

 ベリル……今、どうしているだろうか。長老は、ベリルを拾った日の事を思い起こした。

 たまには集落の外に出ようと、旅をしていた老人。

 王都など何十年ぶりだろう……と、旅をしていた昔に記憶をさかのぼらせた──

「!」

 ふと、道のわきで何の表情も見せない子どもに目が留まる。

 気になってしばらく眺めていたが、子どもに近寄る者もなく、ただじっと立っていた。

 まさか……老人はゆっくりと子どもに近づいた。