「いくらにする?」

 男が期待に胸を膨らませて問いかける。

「そりゃ、相手は領主様だぜ。そんじょそこらの金額なわけはない」

「金貨1000枚はどうかね?」
「おお! そりゃあいい」

 喜び勇んだ男はふと、我に返った。

 自分たちの後ろには他に仲間はいなかったはず……

「……?」

 小さな机を囲むように椅子に腰掛けていた3人の男たちは、声のしたやや上に目線を向けた。

「うわあ!?」
「目が冷めたのかっ」
「ひえっ」

 そこにいたのは、にこりと微笑んでいるベリル。

「やあ」

 爽やかに挨拶をして、狭い部屋の中を見回す。

 殴られたフリをして気絶したように見せかけ、ここまで運ばれてきた。

 彼らの棍棒を受けたのは頭ではなく左腕。

「……」

 ベリルは左腕をさする。痛みはすでになくなっていた。

 治癒力も向上している……?