[! ベリルが?]

 事情を聞いたヴァラオムがあごに手を添えて思案した。

[奴が簡単にやられるとは思えん]
「でっでも3人に一斉に襲われて……」

 嘘じゃない! というように説明するシエラに、ヴァラオムはニコリと微笑む。

[ああ、そういう意味ではないよ。きっと、何か考えがあってわざと連れ去られたのだろう]

「え……?」

[彼は流浪の民の戦士だよ。これくらいの攻撃で倒される者ではない]

 しばらく様子を見よう。ヴァラオムはそう言って、慌てている領主や他の者たちをなだめた。


「おい……ホントにこいつがそうなのか? もっとちっこくなかったか?」

 1人の男がぼそりと発した。

「こいつに決まってんだろ」
「俺も違う気がしてきた……」

 3人の男たちは、気を失っているベリルを取り囲んで口々につぶやく。

「こいつだって! ほら、早く受け渡しの方法を記す手紙を書けよ」

 シエラが聞いた言葉、それは……

『息子は預かった。金は後で要求する』