「やあ、マリーが迷惑をかけたようだね」

[いえいえ、こちらこそ。こんな事でお邪魔して]

 ヴァラオムが代わりに応え、子どもたちを紹介される。

「こっちがシエラでオルネアスだ」

 シェラバルが挨拶するように促すと、少年と少女はおずおずと頭を下げた。

 シエラという少女は、好奇心の瞳を輝かせる。一方、オルネアスは大人しい性格のようだ。

「夕食までゆっくりしてくれたまえ」
[! そのような事までは……]

 軽く断ろうとしたヴァラオムだったが、領主は笑いつつも語気を強めた。

「ここで帰してしまっては、わしの名がすたる」

「では、快く受けさせていただく」

 ベリルが少し頭を下げて了解した。それを確認し、シェラバルは部屋から出て行く。

 1晩、泊まらなくてはならない様子にベリルもヴァラオムも小さく溜息を吐き出す。

 あてのない旅、引き留められるのは構わないが、どうもこういう場は落ち着かない。