「す、すみません!」
「構わんよ」

 軽く手を挙げて立ち去ろうとしたベリルに従者は慌てて立ちはだかった。

「奥方様が屋敷で是非、謝罪したいと」
「そこまでの必要は無い」

 眉をひそめる。だが、従者の顔を見て小さく溜息を吐き出した。

「馬をつれてくる。街の入り口で待っていてくれるように伝えてくれ」

「了解しました」

 深々と頭を下げた従者はまた慌てたように馬車に戻っていく。

[良いのか?]
「仕方ない」

 従者は主人の命令に従っているだけだ。ベリルが断れば従者が怒られる事になる。

 厩舎(きゅうしゃ)から馬を引き取り、街の入り口に向かう。

 街の門に向かうと、馬車が待っていた。途中で気を変えてくれて良かったのに……ベリルは小さく溜息を漏らした。