とある街角、ベリルとヴァラオムは雨上がりの街を宿屋を探して歩いていた。

 あちらこちらに水たまりが出来ている。

 さほど広くもないレンガ造りの道は、馬車が通れば行き交う人と肩がぶつかるほどになる。

“バシャ!”

[あ……あ~あ]

 勢いよく後ろから来た馬車が水たまりを踏んだ。

 それによってベリルはずぶ濡れになる。

 こんな狭い道で避ける処も無い。彼は背後からの音に、濡れる事を覚悟していた。
もっとも、自分がそこにいなければ誰かが水を浴びていただろう。

 それを防ぐ意味もあった。

[水もしたたる何とやら]
「それは皮肉か?」

 気にも止めず歩き出す。

「!」

 すると、その馬車が遠くで止まり従者が慌ててこちらに走ってくるではないか。

 黒いコートに身を包んだ従者は、ベリルを見つけてペコペコと頭を下げる。